最小分散ポートフォリオの理論的背景

スポンサーリンク

前回の記事で、投資オフ会(4/6アジデンを煽る会)に参加した話について書きました。

他の参加者の方の発表内容については、投資オフ会(4/6アジデンを煽る会)に参加しましたの記事にまとめています。

今回は、私の発表した内容について書きたいと思います。

発表では基本的な事項については割愛しているため、今回の話がちんぷんかんぷんな場合は、拙著を読んでいただくといいかと思います。

スポンサーリンク

平均分散アプローチ

A、B、C、Dなどのリスク資産があった時に、予想される期待リターン、リスク(リターンの標準偏差)、相関係数を基にプロットすると、次のような図になります。

平均分散アプローチ
Reading: Portfolio with Multiple Assets

縦軸が期待リターン、横軸がリスクです。

リスク資産の組み合わせの比率を少しずつ変えれば、取りうるポートフォリオは無数にありますが、そのすべてのポートフォリオは赤線で囲まれた範囲に収まります(というよりすべてのポートフォリオの外側を結んだのが赤線)。

同じリスクのポートフォリオのうち、最もリターンが高いポートフォリオを結んだのがMVPより上側の赤線であり、効率的フロンティアと呼ばれます。

最小分散ポートフォリオ

期待リターン、リスク、相関係数が正しく予想されるなら、効率的フロンティア上のポートフォリオのうち、リスクフリーレートからの傾きが最大になる(シャープレシオが最大になる)接点ポートフォリオが最良のリスク資産ポートフォリオということになります。

CAPMが成り立つなら、市場ポートフォリオが接点ポートフォリオになります。

これを示したのが次の図で、オレンジの点が接点ポートフォリオです。

最小分散ポートフォリオ(理論)
Minimum Volatility Portfolio

しかしながら、実際には下の図の青の点のように、予想された接点ポートフォリオは予想より低いシャープレシオになることが多くあります。

最小分散ポートフォリオ(実際)
Minimum Volatility Portfolio

リスクが最小になるポートフォリオである最小分散ポートフォリオ(上の図の赤い点、下の図の緑の点)のほうがかえって、接点ポートフォリオよりシャープレシオが高くなる傾向にあります。

これは、期待リターンの予想が難しいこと、それから低リスクアノマリーによるものと考えられます。

低リスクアノマリー

「ハイリスク・ハイリターン」という言葉があるように、一般にはリスクが高いほど期待リターンも高くなると考えられます。

しかしながら、実際には、高リスク資産のリターンは低リスク資産のリターンを上回らないどころか、低リスク資産のほうがリターンが高いということがしばしば観察されます。

これを低リスクアノマリーと呼びます。

低リスク資産が高いリターンを上げる理由としては、レバレッジ制約や心理バイアスが挙げられます。

理論的には、シャープレシオの高いポートフォリオにレバレッジをかけることで、高リスク資産に投資するよりも高いリターンを得られますが、実際には規制や借り入れの制限、レバレッジへの抵抗感などからレバレッジには制約があります。

そのため、高いリターンを得たい投資家はレバレッジをかけるのではなく、高リスク資産に投資することで高いリターンを得ようとし、高リスク資産が割高になります。

また、自信過剰バイアスなどの心理バイアスにより、高リスク資産を好む投資家が多いことも、高リスク資産が割高になる要因になります。

低リスクアノマリー以外のバリューやモメンタムといったアノマリーも心理バイアスを利用しています。

心理バイアスを利用したアノマリーは、機械学習や人工知能の発達により、アノマリーを利用したファンドの資産額が増えると、消滅する可能性も考えられますが、レバレッジ制約に関しては制度が変わらない限り続くため、低リスクアノマリーはより継続しやすいのではないかと期待しています。

参考:リスクパリティ・ポートフォリオ

最小分散ポートフォリオは期待リターンを考慮しないリスクベース・ポートフォリオの一種ですが、同じリスクベース・ポートフォリオの一つにリスクパリティ・ポートフォリオがあります。

最小分散ポートフォリオとの違いについて説明しておきます。

株式60%、債券40%といった伝統的なポートフォリオは、リスク寄与度という観点でポートフォリオを考えると、株式のリスク寄与度が90%程度を占めるといった問題があります。

リスクパリティ・ポートフォリオ
The risk parity approach and financial stability

株式と債券など投資対象の資産のリスク寄与度を等しくしようというのがリスクパリティ・ポートフォリオの考えで、株式と債券のポートフォリオの場合は、株式26%、債券74%程度になります。

最小分散ポートフォリオもリスクパリティ・ポートフォリオも期待リターンを予想しないリスクベース・ポートフォリオの一種ですが、最大の違いはリスクとリターンに対する考え方です。

最小分散ポートフォリオではリスクとリターンは比例しないと考えるのに対して、リスクパリティ・ポートフォリオではリスクとリターンは比例すると考えます。

また、ポートフォリオに組み込む資産や銘柄の選定による影響は、リスクパリティ・ポートフォリオのほうが大きくなります。

これは、最小分散ポートフォリオでは低リスク資産に比率が大きく偏るのに対して、リスクパリティ・ポートフォリオでは各資産のリスク寄与度を等しくするため、全資産がリスクと相関係数に応じたある程度の比率で組み込まれるためです。

時系列データにおけるボラティリティとリターンの負の相関

ここまでは、予想される期待リターン、リスク、相関係数を基に、最小分散ポートフォリオを決め、定期的にその比率にリバランスするという、固定的なタイプの最小分散ポートフォリオについての話でした。

しかしながら、私は直近の値動きを基に毎月比率を変えるタイプの最小分散ポートフォリオを採用しています。

これから、その理論的背景について説明していきます。

単一の資産においても、時期によってリターンの高い時期・低い時期、ボラティリティの高い時期・低い時期があります。

このような時系列データにおいて、ボラティリティとリターンは比例の関係にあるでしょうか。

VIXとリターン
The Art and Science of Volatility Prediction

この図は縦軸をVIX、横軸をリターンとした散布図です。

ボラティリティが大きくなる時期にリターンも高くなり、ボラティリティが小さい時期にリターンも低くなるかというとそんなことはなく、むしろボラティリティとリターンには負の相関があります。

上の図はVIXを使ったものですが、実現ボラティリティでも同様です。

実現ボラティリティとリターン
インプライドボラティリティー指数を用いたマーケットタイミング戦略

ボラティリティとリターンが比例しない、むしろ負の相関があるということは、ボラティリティが高い時期に投資しない、あるいはボラティリティが高い時期は比率を減らすことができれば、ポートフォリオのリスクを下げ、リターンも維持または向上させることができるということになります。

ボラティリティの継続性

では、ボラティリティが高い時期をどのように予想すればいいでしょうか。

S&P500のボラティリティの継続性
Predicting Volatility

この図は横軸をある月のボラティリティ、縦軸をその翌月のボラティリティとしたS&P500のデータの散布図です。

ボラティリティが高かった翌月はボラティリティが高く、ボラティリティが低かった翌月はボラティリティが低い傾向があります(決定係数0.35)。

ボラティリティは高い時期や低い時期がまとまる、ボラティリティ・クラスタリングや分散不均一性と呼ばれる性質があるため、ボラティリティには継続性があります。

MSCI-Kokusai(日本を除く先進国株式の指数)の過去20日間のボラティリティとその後20日間のボラティリティのデータでも、同様の傾向が見られます。

過去ボラティリティと将来ボラティリティ
リスクパリティ・ポートフォリオはこれからも優れるのか

参考までに、リターンにも同様に継続性が見られるかを表したのが次の図です。

モメンタム
Predicting Volatility

横軸をある月のリターン、縦軸をその翌月のリターンとした図ですが、ボラティリティの時のような継続性は見られません(決定係数0.00)。

各資産クラスの特徴

分散不均一性、ボラティリティとリターンの負の相関について各資産ごとにまとめたのが次の表です。

各資産ごとの特徴
The Art and Science of Volatility Prediction

表の1行目が分散不均一性ですが、株式・コモディティ・ハイイールド債は分散不均一性が強く、債券は弱いようです。

2行目はボラティリティとリターンの負の相関ですが、株式は負の相関が強く、コモディティ・ハイイールド債・債券は弱いようです。

最小分散ポートフォリオのバックテスト

これらの性質を利用し、私は毎月比率を変更させえるタイプの最小分散ポートフォリオを採用しています。

レバレッジをかけない場合のポートフォリオの資産推移は次のようになっています。

最小分散ポートフォリオの成績
Portfolio Visualizer

青線のS&P500と同様のリターンながら、赤線の最小分散ポートフォリオはボラティリティが小さくなっているのがわかります。

1988年から2019年の3月末までのシャープレシオは、S&P500が0.53なのに対し、最小分散ポートフォリオは0.88でした。

なお、このポートフォリオはリバランスでの手数料は考慮していません。 

証券会社にもよりますが、毎月手数料が43.2ドルかかることになるので、資産額が大きいほど有利になります。

また、税金の影響が大きいので、拙著で紹介した節税方法を使うかどうかでパフォーマンスが大きく変わります。

年ごとのリターンはこのようになっています。

最小分散ポートフォリオの年ごとの成績
Portfolio Visualizer

S&P500と比べ非常に安定しており、1987年以降の33年3ヶ月においてマイナスの年は2回のみであり、その年も1999年に-4.56%、2009年に-2.35%と、下落率は限定的です。

最小分散ポートフォリオの得意な局面・苦手な局面

私が採用している最小分散ポートフォリオは時期によっては、大きく株式に偏ったり、債券に偏ることになります。

例えば、2018年1月は株式74.49%、債券25.51%といったように株式の比率が高く、2018年12月は株式17.09%、債券82.91%といったように債券の比率が高くなっています。

一般にボラティリティが高かった翌月はその資産の比率を減らし、ボラティリティが低かった翌月はその資産の比率を増やします。

そのため、株式のボラティリティが低く、ポートフォリオの株式比率が高まっている時に、株式が急落すると、最小分散ポートフォリオも大きく下落することになります。

2018年で言うと、10月は株式比率が6割を超えていたので最小分散ポートフォリオは-5.29%でした。

その後は株式のボラティリティが高い状態が続いたので株式の比率を減らし、12月は株式の暴落を回避し債券高の恩恵を受け、+3.02%となりました。

最小分散ポートフォリオの2018年の成績
Portfolio Visualizer

にほんブログ村 株ブログ 米国株へにほんブログ村 英語ブログ 英語学習者へにほんブログ村 その他生活ブログ 節約・節約術へ

資産運用に関する書籍を出版しました
資産運用に関する書籍を出版しました。タイトルは『運もお金もない人のための資産の増やし方』です。こちらからご購入いただけます。 Kindle Unlimitedの読み放題対象です。Ki...

コメント